「朝顔がきれいに咲いたね」と母が家内に話している。ああ、そうか。６月３０日の「あさがお・ほおずき市」で買い求めたものが、咲いたんだな。そう思いながら、朝刊に目を通していた。
しばらくすると、また母が、「あれ、大きなクワガタムシが玄関で遊んでる」と言っている声が聞こえて、今度は「何言ってるのかなー」と知らんぷりをしていたが、「こんな所にいないで、外に出てけ」「そら、そら」と追い立てているようだ。
とうとう私も、玄関に出て行って、「なにしてるの」と言いながら覗き込むと、どこから入ってきたのか、本当に大きく立派なクワガタムシが壁に張り付いていたのだ。
「朝顔がきれいに咲いたり、クワガタムシが来てくれたり、朝から忙しいけど何かいい事がありそうだね」と母が言うので、「うん、そうかな」と私にしては珍しく素直にうなずいた。
「こんな町中にいるよりは、どこか山の中に帰してやった方がいい」と、登校しようとしていた娘が言うと、母も「そうだな、城山にでも持って行ってやれ」と言うので、クワガタムシを捕らえてビニール袋に入れ、車で城山に上り、裏手の方の雑木林に置いてきた。
朝からバタバタしたけれども、何かいいことしたような、そんな気持ちになりながら、城山を下りてきた。