わが家に神棚がある。私は毎朝、家を出る前に今日一日の平穏無事なることを願って手を合わせる。いつのころから始めたのかは自分のことでもはっきりしないが、祖父も父もそうしていたのを見て、私も始めたのだと思う。
その神棚に水をあげたりお供え物をするのは、母と家内の役目だ。
先日、家内が神棚のお榊（さかき）に花が咲いているのを見つけた。白く小さい花だが、実は私はお榊の花を見たのも、また神棚のお榊に花が咲いているのを見たのも初めてであった。
家内が「まあめずらしい。何か良い事があるのかもしれないわね」と言うのを聞きながら、私はそんな会話のできる穏やかな日々がわが家の中を静に流れてゆくことこそ「良いこと」なのかもしれないと思った。